青山里会 50周年 デジタル記念誌


変化と挑戦


2015-

将来を見据え、あらゆる事態に耐えうる法人へ

これまでは地域の人々のニーズに応えるかたちで各地域での小規模拠点づくりなども積極的に推進し、急激な拡大路線を歩んできた青山里会ですが、事業継続性の観点から、将来を見据えた土台固めを行うことに踏み切り、改革を進めていくことになります。

一人一人が経営運営に携わる組織へ

強力なリーダーシップで青山里会をけん引した川村 耕造初代理事長からバトンを受けた川村 陽一理事長も、一法人として一人の「スーパーマン」がけん引していく組織運営に危機感を持ち、法人の役員体制やミッション(使命)、理念、行動指針を一新するなどのさまざまな改変に取り組んできました。

しかし、2019年に川村 陽一理事長が逝去。そのインパクトは、大きいものであったことは言うまでもなく、これまで川村兄弟のリーダーシップの下で走り続けてきた法人は、変化を余儀なくされます。2019年1月、落合 将則が第三代理事長に就任後、組織改編が加速度的に進んでいくことになります。

職員一人一人が自ら経営運営をしていく組織体制へ。事業執行体制の改革(2019)

「人財マネジメントプロジェクト」において、法人ミッション(使命)、理念、行動指針、目指す職員像をブラッシュアップしました。この「使命・理念・行動指針」の基、謙虚さと誠実さを忘れず、お互いを尊重し合い、十分な議論を重ねながら、職業倫理に基づく質の高いサービスを実践するため、法人本部事務・拠点や事業管理・部門などの組織改革や業務改革、人事制度改革がスタートしました。

社会福祉法人 青山里会のミッション「福祉事業で社会に貢献します」

社会福祉法人 青山里会 三つの理念

  1. 生きがいの実現 ご利用者の自分らしい充実した人生をサポートします。
  2. 働きがいの実現 学び・成長し、誇りを持って働きます。
  3. 頼りがいの実現 地域になくてはならない存在になります。

目指す職員像「変化を恐れず、挑戦し続ける」

法人全体での経営改善を実行へ! 経営改善プロジェクト「KAIKA」スタート(2020〜)

2010年以降を振り返ると、人件費の上昇や事業費のコスト高から経営状態が悪化していたのは事実であり、経営改善は喫緊の課題でした。

このような課題に対し、法人では経営改善プロジェクト「KAIKA(かいか)」をスタートさせます。経営改善プロジェクト「KAIKA」は、職員一人一人が青山里会の経営や運営の課題をわがこととして捉え、現状や課題を分析し、既成概念にとらわれず、自由な発想で改善活動に取り組み、成果につなげることを目的としました。

現場の視点も取り入れた活動にするため、さまざまな職種のスタッフが参画し、関係者全員のボトムアップで活動を推進していきました。各プロジェクトにおいては、問題の洗い出しと共有からスタートし、現状把握と分析、改善計画の策定と実行、改善計画の評価という流れで活動を進めていきました。

第1期KAIKAプロジェクト活動の成果

①食事改善

食事の質を落とさず、食材費の大きな削減をすることができ、直接的な収支の改善につながりました。


②ICT・介護ロボットの利活用の検討

ICT・介護ロボットを特定施設で導入し、課題の洗い出しや効果測定を行うプロセスを実施することによって、効果のあるものを横展開することにつながり、無駄のない導入・活用につなげることができました。 

③リスク管理(マネジメント)

介護事故の防止や対応、感染症の防止や対応策について、法人内のどの事業所においても標準的な取り組みができるようにし、また、事業所間でのコミュニケーションがスムーズにできるようになりました。特に、感染症防止対策では、コロナウイルス感染症について、「持ち込まない」「広げない」を徹底し、クラスターが起きた際にもチームを組み早期に対応することができるようになりました。

KAIKAによる検討結果は、法人や事業所の経営・運営の改善、経営基盤の確保に資する多くの成果を生んでいることはもちろん、「職員自らがチームで経営運営する」という現在の青山里会の風土づくりにつながっています。

地域の皆さまからの信頼と利便性を損なわないことを大前提に、事業再編と拠点強化に着手(2014〜)

これまで青山里会は、地域のニーズに基づき12拠点で事業を展開し、さまざまなサービスを提供してきました。しかし、時代とともに地域社会の構造は変化し、地域のニーズや求められるサービスも変わっていきます。

2016年から2017年にかけて施行された改正社会福祉法に基づく社会福祉法人制度改革では、社会福祉法人にガバナンス、透明性、財務規律などの取り組みが求められました。加えて、報酬や委託費・公定価格などの改定や人材確保の困難さと人件費負担の上昇などの難局を、どう乗り切っていくかが大きな課題となっていました。

そのため、青山里会でも社会福祉法人の本旨、青山里会の果たすべき役割について再認識し、介護福祉事業を継続的に実施していくために、人・もの・資金などの限りある資源を効率よく効果的に活用することが必須となりました。

2018年ごろよりご利用者やご家族、地域の利便性に支障を来さず、また信頼を失わないことを大前提として、事業継続性の観点を持った、事業強化を目的とした事業の再編と拠点機能の強化を進めることとなります。この取り組みによって、いついかなるときも継続的に安定したサービスを提供できる強固な事業経営基盤を持つ法人へと発展していきます。

サービス強化のための既存施設の改修、新施設開設と新たなサービス展開

小山田特養個室ユニット改修事業の実施(2014)

小山田特別養護老人ホームでは、かねてより、小山田特養の個別ケアをより推進するため、個室化を図ることや生活スペースなどの居住空間の改善が必要でした。これらを実施していくため、サテライト型特養の設置を進め、小山田特養の定員を減らし、空いたスペースを活用して母体施設である小山田特養を改修して、個室化などを行う計画を進めていました。

サテライト型特養4施設の設置により、小山田特養本体から入所者70名が転出。小山田特養の入所定員は130名となりました。70名の定員分の空いた居室を活用し、個室や共用スペースに改修すると同時に、看取りケアを推進するための環境も整備し、60名定員の個室ユニット型の施設へ改築しました。また、残りの定員70名の従来型多床室についても、4人室についたてや居室のプライバシー確保のための改修工事を行い、アメニティーの向上を図り、耐震工事や設備のリニューアル工事も併せて行いました。そして、2014年7月1日、当時、全国でも数少ない、改修型のユニット型個室と従来型特養が同一建物内に混在した施設として、リニューアルオープンしました。

小山田特養はこのように地域の介護ニーズの増大に応えるように、施設の増築増床を繰り返し、その後、個別ケアや地域ケアを進めるため、介護や福祉機能をサテライト型特養へ設置という形で地域に介護拠点を展開。本体施設の個室化やアメニティーの向上を図り、開設から50年以上にわたり施設の機能の充実と進化を図っています。

今後もさらに重度化対応、看取りケア、認知症ケアに取り組んでいきます。

桜グループホーム開設(2015)

認知症高齢者に家庭的な生活環境を提供し、本人のペースに合わせた生活をサポートするグループホームを、四日市市桜地区に開設しました。

青山里会と桜地区は、かねてより地域行事(夏祭りや文化祭など)を通じて交流が深く、地元自治会や地域住民の協力や後押しをいただき、わずか3カ月での建設工事となりました。

小山田・四郷・亀山に続く4施設目となる「桜グループホーム」は、1ユニット定員9名の小規模施設ではありますが、「地域交流スペース」を併設し、地域住民の交流・生きがい・健康づくりなど、「介護予防教室」や「サロン」として活用できるようになっています。

また、広大な敷地には今後の地域ニーズに応じて、さまざまな事業展開や増改築が可能となるよう、あらかじめ建物や設備に工夫が行われています。

介護予防の取り組み。健康守り隊から、基準緩和型サービス「よかよか倶楽部」へ(2017)

社会福祉法人の役割として、地域の方々が住み慣れた地域で長く生活ができるような支援ができないかということで、2009年から独自事業として、介護予防の取り組みを開始しました。それが「健康守り隊」です。リハビリ、保健師、ソーシャルワーカー、栄養士が担当し、健康チェック、運動(体操、ストレッチ、筋トレ、ウォーキング、音楽療法、バードウォッチングなど)、生活に役立つ情報発信、医療、介護、生活相談を行いました。60代から90代の人まで参加し、参加者は40名から70名にも上り、この場を通じて地域の方たちの交流機会ともなっていました。

このような活動を続ける中、2017年の介護報酬改定で日常生活支援事業・総合事業が位置付けられました。最初はなかなか立候補するところがなく、四日市市の強い意向で、青山里会3地域(小山田・水沢・神前)で「よかよか倶楽部」を立ち上げ、スタートさせています。当初は5名程度から始まりましたが、口コミで広がり、早い段階で10名から15名程度の参加をいただけることとなりました。週に1回、2時間送迎付きで実施。6年が経過する今も、開所当初から変わらず利用している人もいます。

三重西に小規模多機能施設を開設(2018)

地域住民主体の共助の仕組みと協働した住民の生活を支える介護拠点が誕生します。

近年日本では、1人暮らしや高齢者夫婦のみの世帯が増加する中で、孤立死や社会的孤立が社会問題となっており、その予防策は大きな課題です。

青山里会では、高齢化の進む四日市市内の大型団地を調査・研究し、1人暮らし高齢者や高齢者夫婦のみの世帯の「食の確保」「総合相談」「交流の場」の3機能を有する「孤立化予防拠点」を、団地創設後40年から50年余り経過して高齢化が進んでいる高花平地域および三重西地域の2カ所の団地内にある商店街の一角を借用して、2012年3月に設置しました。

ここでは孤立化の防止や孤立化している人の早期発見を目指し、法人単独型の在宅介護支援センターと地域住民が気軽に集えるコミュニティーレストランという運営形態を取っており、専門職が連携し、地域の高齢者などが抱える生活ニーズをいち早く察知し、孤立化防止に結び付く成果がありました。また、地域で生まれた新たな生活支援サービス団体(総合事業)「ライフサポート三重西」「高花平ちょっと手を貸して運動」と連携・協働しながら、事業を進めました。

このうち、三重団地の自治会などにより、これらの機能に加え、高齢化が著しい三重団地において介護サービスの拠点がなく、今後、増大する介護ニーズに備え、要介護高齢者や家族介護者支援を行うため、介護拠点を設置してほしいとの要望があり、四日市市の2017年度の小規模多機能型居宅介護事業所の公募に応募し、「通い」「訪問」「宿泊」のサービスを柔軟に組み合わせて提供することにより、利用者の在宅における生活の継続を支援する介護拠点である、小規模多機能型居宅介護事業所「コミュニティケアホーム三重西」を2018年4月1日に開設しました。

【事業内容】
小規模多機能型居宅介護事業所(登録定員25名、通い15名、宿泊5名)
住所:四日市市三重7丁目109

「コミュニティケアホーム三重西」が開設したことにより、かねてから活動していた地域住民主体の共助の仕組みと協働し、住民の生活を支える介護拠点が誕生しました。

新規事業計画の見直し(2018)

  • 諏訪ハッピースペース事業の撤退方針を決定
  • 開発行為の頓挫と建築費の高騰からサテライト水沢の整備事業の取り下げを決定

通所介護事業の廃止と再編(2019〜)

  • 小杉通所介護事業所を廃止(2019)
  • 川島、かんざき、亀山の三つの認知症対応型通所介護事業所を廃止し、一般型通所介護事業に統合(2019)
  • おおぞらデイサービス(川越町)を廃止

訪問事業所の再編(2019〜)

  • 四郷訪問看護ステーションを廃止(2019)
  • 亀山ヘルパーステーションを青山里会ヘルパーステーションへ統合(2020)

サテライト型特養の再編(2019〜)

小規模のサテライト型の特養においては、事業継続性の面から、母体拠点との連携強化を図るために近隣の母体施設へ変更したり、施設を廃止したりして法人内の他施設で受け入れるなどの対応を行い、再編を実施しました。コロナ禍においてリスクマネジメントの困難さが顕著となったことも一つの背景となりました。

  • サテライト小杉の母体施設を小山田特養からかんざき特養へ変更。母体施設との連携強化(2019)
  • サテライト小杉を廃止(2021)
  • サテライト川島、サテライト常磐について、母体施設を小山田特養からかんざき特養へ変更。母体施設との連携を強化(2023)

これからの法人経営・運営を支える人材獲得と人材育成、定着への取り組み

介護業界における人材不足は深刻な状況であり、青山里会にとっても大きな課題となっています。このような中で人材獲得、また、働きがいのある、働きやすい職場づくりによって人材育成と定着を図ることは急務であり、青山里会では多角的な取り組みを行っています。

人材獲得戦略「ダイバーシティ採用と職務の機能分化による生産性向上」

青山里会ではダイバーシティ(多様な人材)採用と職務の機能分化による生産性向上を人材確保のための経営戦略としてきました。

アクティブ・シニアの活用と障害者雇用への取り組み

青山里会においては、2007年より定年を65歳に引き上げ、同時に65歳以後の継続雇用を開始しました。当時、これは2012年の高年齢者雇用安定法法改正に先駆けての動きであり、四日市市高齢者雇用優良事業所表彰を受けています。

また、障害者雇用においても、介護現場での障害者雇用とキャリアアップ、そして定着化への取り組みが評価され、2014年に三重県と四日市市から障害者雇用優良事業所として表彰を受けました。

2015年には「介護男子スタディーズプロジェクト」に参画し、地元の若者男性に向けた介護の仕事のPRにも取り組みました。

職務の機能分化による生産性向上。高齢者の「したいこと・できること」を大切にケアサポーターとして採用

職務の機能分化による生産性向上とは、介護の周辺業務を切り出して、介護助手にその役割を担っていただくことにより、介護職員の直接介護業務を増やし、ケアの質の向上を図るというものです。

2015年に地域医療介護総合確保基金を活用した三重県老人保健施設協会「介護助手」モデル事業で、3名の介護助手を受け入れて以降、青山里会では「ケアサポーター」という職種で高齢者の採用を行っています。

四日市福祉専門学校との連携も。グローバル人材の登用を推進(2018年〜)

青山里会では人材確保施策として、2008年から日系ブラジル人の登用を進めてきましたが、本格的なグローバル人材の獲得と育成が始まります。国は2017年9月施行の「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」により、在留資格「介護」を新たに創設し、11月には外国人技能実習制度の対象職種に介護職種を追加、さらに2019年4月からは在留資格「特定技能」を創設させます。入学希望者の減少傾向が続いていた四日市福祉専門学校においても、2018年度より留学生の受け入れを開始し、16名が入学しました。四日市福祉専門学校では、独自に日本語教員を配置、留学生が過ごしやすい環境整備を行い、異なる文化を持つ生徒が集う場所へと変化を遂げていきます。

2020年には四日市福祉専門学校の卒業生のうち在留資格「介護」の取得者9名が、初めて青山里会に就職します。また、2020年以降には技能実習生や特定技能の受け入れも人材獲得施策の一つとして進めています。また、外国籍の職員の相談窓口、学習スペース、図書スペース、礼拝室を備えた「グローバル人材育成開発室」を設置し、四日市福祉専門学校教員などとも連携を図り、キャリアアップ、生活支援、介護スキル向上、日本語能力向上など総合的な支援を実施しています。

働きがいのある、働きやすい職場環境づくりの推進(2018〜)

人材確保への取り組みとして、多様な人材採用を推進してきましたが、採用後の定着・育成という課題は積み残したままの状況でした。その課題を解決すべく、人事制度や処遇・評価制度を構築する取り組みが始まります。

職員の声を聞くことから始まる改革(2018)

2018年、法人の新たな組織づくりの一貫として、育成研修体制の強化を目的に、人事部に人材育成開発室が設置されました。

この人材育成開発室で実施した最初のアプローチが、職員の意識調査(モラルサーベイ)分析です。その結果、人事制度改定の必要性が浮き彫りとなります。また、職員の期待に応えるべく、職員が一体となって事業を進める「人を大切にする経営・人事制度への転換」を目標に、2018年11月1日に法人ミッション(使命)・理念・行動指針を一新。さらにウェブサイトのリニューアルの方向性を検討する中で、2019年5月には新たなロゴ(シンボルマーク)を職員の投票で決定するなど、職員の声に耳を傾けた取り組みを行っていきます。

新たな人事制度の構築(2019〜)

2019年度に人財マネジメントプロジェクトを発足させ、人材の育成や管理の仕組み、運用上の課題を精査しながら、評価と育成・活用と処遇の一体的運用を図る新たな人事制度「職群役割資格等級制度」を取りまとめます。新たな制度は、「キャリアパス構築」「介護職員の処遇改善」「働き方改革法」に対応する仕組みや施策の整備が盛り込まれた内容となりました(2020年度に運用開始)。

キャリアアップ支援と人事考課制度の導入(2020〜)

職員のキャリアアップ支援として、法人全体の職員研修制度、資格取得支援制度(各種助成制度やeラーニング研修制度など)の運用を開始しました。

また、2021年度には人事考課制度を本格実施します(2020年に施行的実施)。職員のモチベーションアップにつながる仕組みとして、特に目に見える実績(仕事の質と量)とそれを支える知識(分かる)、態度・価値観(やる気になる)、技術・技能(できる)の三つの要素で評価することを大切にして運用しています。

働きやすい職場環境づくりを推進(2019〜)

2019年「みえ働きやすい介護職場取組宣言」を申請(承認は2019年3月)し、その取り組みを公表し、​​2023年には「みえ働きやすい介護職場取組宣言 ゴールド事業所」となりました。「みえ働きやすい介護職場取組宣言」とは、介護職員の確保、定着および介護サービスの質の向上につなげるため、職場環境の改善に積極的に取り組むことを宣言する事業所や法人を三重県が証明し、その取り組み内容を公表するものです。

青山里会の宣言内容

『新たな理念「生きがい」・「働きがい」・「頼りがい」の実現を目指して、職員一人ひとりが仕事にやりがいを持ち、仕事を通して学び成長し、心身ともに健康に働き続けることのできる職場づくりに努める』

青山里会の主な取り組み

① 職員で作るプロジェクトチームでの活動

職種や役職、年齢の垣根を越えたチームで職員自らアイデアを出し、行動し改善するプロジェクトチームは、そのプロジェクトの活動目的に加え、プロジェクトチームに参加することが、それぞれの働きやすさや働きがいに通じるものがあると考えて活動しています。

  • 青山里会の広報を担う「キラキラプロジェクト」(2019〜)
  • 経営改善プロジェクト「KAIKAプロジェクト」(2020〜)
  • 次世代育成支援&働きやすい職場環境の整備を推進「NEXT+プロジェクト」(2020〜)

② 共に学び成長する組織文化の醸成「法人研究発表会」の開催(2018〜)

共に学び成長する組織文化の醸成を目的として、各事業所や職種で構成される現場の職員がプロジェクト単位で取り組み、その研究成果を毎年発表する「法人研究発表会」を開催しています。法人が職員の研究活動を奨励・支援することを明確に位置付けたことで、職員は勤務経験や職位に関係なく、自由な発想で研究活動に取り組むことが可能となりました。

あくまでも現場のサービスの質向上と業務改善を目指した現場職員による実証研究、実践・事例研究であることを重要視しつつ、研究が科学的根拠に基づくものとなるよう大学教授によるゼミ形式での研究指導やOFF-JT研修によりデータ分析、パワーポイント作成、研究倫理の審査、文献・資料の提供などの支援や環境整備を行っています。

さらに、発表会で優秀賞を受賞した研究者などが、その成果を学会や業界団体などの研究大会で発表する際には、外部派遣研修(法人が全額費用負担)として位置付けることができる他、就業規則に定まる業務上有益な研究表彰の選考対象となることになっています。

最近の開催ではWeb会議システムの導入、動画配信サイトにて配信を行うことによって、オンラインでの参加も可能となり、研究発表会をより多くの職員が身近なイベントとして捉え、積極的な参加を促す企画も開催しています。

ケアの変化

ケアに関してもさまざまな変化がありました。特に福祉機器、ICT・介護ロボットの利活用は、利用者により一層安心・安全なサービスを提供できるようになり、職員の負担軽減や効率化につながっています。

また、新型コロナウイルス感染症の出現もケア現場に大きな影響を与えるものでした。

福祉機器の導入、科学的介護、ICT・介護ロボットの推進

ノーリフトケアを目指して

「人力での抱え上げは原則行わせない」という国の方針に基づき、職員の腰痛対策として、移乗リフト、スライドボードなどの福祉機器、福祉用具の導入が進みました。小山田苑を皮切りに、小山田老健、亀山老健へと活用が広がり、現在では特養での活用も定着しています。またこれらの導入は、職員の腰痛対策だけでなく、利用者にとっても安全、安心なケアを受けることができることにつながっています。

科学的介護の推進

介護のデータベース化、エビデンスに基づいたケア(科学的介護)の推進の方向性が打ち出され、介護ソフトの活用においても、介護報酬の請求業務や、ケアプラン業務だけにとどまらず、介護記録のデータ管理の取り組みを進めることとなりました。

これにより、記録時間の短縮、チームケアにおける情報共有の効率化、介護記録のペーパーレス化が実現できました。

また2021年には、従来のCHASEとVISITを統合したLIFEの仕組みができました。ADL、認知症、既往歴、栄養、口腔、リハビリに関するデータを提出し、フィードバックをケアプランに反映させるというPDCAサイクルのケア実践が本格的にスタートしました。LIFEについては、新しい取り組みであったため、KAIKAプロジェクトのサブプロジェクトを発足し、LIFEの仕組みの共通認識、進捗や課題の共有を行いながら進めています。

ICT・介護ロボットの利活用

ICT介護ロボットについては、超高齢社会における要介護者の急増が予測される一方で、少子化、介護人材不足という時代背景があり、国としては2014年頃から本格的に、ICT・介護ロボットの活用を推進してきました。近年では、ICT機器・介護ロボットの開発も急速に進み、当法人でも「aams」などの見守りシステム、排泄支援機器であるスカイリフト、介護記録と連動するバイタル測定機器、マッスルスーツなどを導入しています。

KAIKAプロジェクトでも、「楽(らく)ネット」と命名し、誰もが、楽しく、業務がスマート(らく)になることを目指して取り組みを進めました。法人内のICT・介護ロボット利活用状況をまとめて公表し、好事例の紹介、評価の仕組み、研修など効果的な活用につなげています。見守りシステムは事故防止や睡眠状況、生活パターンの把握によって、ケアの変化をもたらし、また看取り期の利用者については、急変時の早期発見対応につながっています。スカイリフトの活用においても、排泄状況の改善につながった事例もあり、今後もさらなる利活用に取り組んでいきます。

法人内情報共有、会議の効率化

法人内での情報共有ツールの活用については、試行錯誤を繰り返し、現在は「LINE WORKS」を利用しています。多職種、他部門、事業所内などで、情報共有、連絡手段、オンライン会議など、有効な活用につながっています。

また新型コロナウイルス感染症の流行により、集合形式の会議などが困難となったことから、会議、研修については、Zoomを早期に導入。感染症が5類に移行した今でも、多拠点での会議や研修に活用することで、業務効率化、また研修参加の促進にもつながっています。

コロナ禍を経て

世界的に大流行した新型コロナウイルス感染症の出現により、2020年からケアの現場でもさまざまな変化を強いられることとなりました。

青山里会では早期に情報共有の徹底を図り、感染状況の把握、対策確認などの協力体制を構築することにより、各施設間で協力しながら迅速に感染対策、感染時の対応を行ってきました。

また、これまでもさまざまな場面で連携を図ってきた社団主体会とより連携を深め、ワクチン接種については、市内でもいち早く実施することができ、検査などの体制、治療などについても、早期発見、早期対応に努め、感染拡大、重症化防止を図ることができました。

ケア現場では、法人内で統一の「リスク状況に応じた対応方法」を作成し、それに基づいた対応を行いました。

KAIKAプロジェクトにおいても、対策の指針やマニュアル作成などを行い、それに基づいた実践を積み重ねることで、感染症に対する意識の向上や対応力の強化につながっていきます。

コロナ禍では職員が感染し媒介しないよう、職員のマスクの常時着用とケア中のアイガード装着はもちろんのこと、利用者の生活エリアにおいても、徹底した感染対策が講じられていきました。

【利用者の生活エリアでの対策例】

  • パーティションの設置や換気
  • デイルームなどのテーブル配置を、一方向に着席いただく形式に変更 など

面会についても新型コロナウイルス感染症が始まって以来、2年程度は面会を制限せざるを得ない状況となります。そのような中で、家族と顔を合わせていただく機会をなんとか作りたいと、オンラインでの面会をスタートさせていきます。その後、段階的にガラス越し面会、対面面会と緩和をしてきました。オンライン面会は今でも面会方法の一つとして定着しています。

職員たちも、重症化しやすい利用者の命を守るという観点から、職場だけでなく自宅での生活においても感染リスクのある行動はできるだけ控え、国や県の支援により、定期的にPCR検査や抗原検査を行いながら勤務をした4年間でした。

今後も地域の方々や利用者の生活を守り続けていけるように、業務継続計画(BCP)を各施設、事業所で作成して取り組んでいきます。

経営基盤の改善、これから先を見据えて(2021〜)

コロナ禍において、さまざまな活動の縮小や自粛という状況に陥りましたが、その間に経営基盤の改善を図り、新たな事業展開への土台を固めてまいりました。

2023年6月、第三代理事長の落合 将則が退任。新理事長に近藤 辰比古が就任し、青山里会のさらなる発展へのバトンを受け継ぎます。

とどまることのない地域の皆さまのことを考えた青山里会のチャレンジ。既存施設の大規模改修事業(2021〜)

  • 小山田苑、第二小山田特養(2021)
  • 亀山老健、介護総合センターかんざき(2022)
  • 小山田グループホーム、四郷グループホーム(2023)

新たなチャレンジ。経営改善プロジェクト「KAIKA」、新たな四つの柱

2023年から近藤理事長体制となり2年目、青山里会が50周年を迎える2024年。さらなるチャレンジとして、新たな四つの柱を掲げてKAIKAプロジェクトを実行しています。

  1. DX・生産性向上
  2. 事業再編・効率化
  3. 人材確保・ブランディング
  4. 地域福祉推進

青山里会はこれまでの50年の歩みを礎とし、これからも先人たちが築いてきたこの礎を基に、福祉事業で地域共生社会の実現に貢献していくため、法人の目指す職員像である「Change & Challenge(変化を恐れず挑戦し続ける)」を合言葉に、全職員の持てる力と知見を結集し、常に新しいことにチャレンジし、これからも地域に信頼され、必要とされる法人づくりを進めてまいります。

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2015

  • 桜グループホーム(認知症対応型共同生活介護)を開設
  • 韓国ソマン福祉財団視察研修に青山里会から3名(介護3)を派遣
  • 創立41周年記念式典を開催
  • 「介護男子スタディーズプロジェクト」に参画

2016

  • 川越町に「デイサービスセンターおおぞら」を開設(医療法人朋友会伊藤クリニックから事業継続)
  • 四日市福祉専門学校の校長に白澤 政和が就任(低迷する学校運営の改革、ベトナム・フィリピン・中国など新たな外国人留学生ルート確立へ)
  • 四日市市三重地区に「三重西介護センター(小規模多機能型施設)」を開設。地域の互助組織「ライフサポート三重」との連携・協働により運営
  • 特定相談支援事業所小山田苑を開設
  • 創立42周年記念式典を開催
  • 韓国ソマン福祉財団視察研修に青山里会から5名(介護3、SW1、OT1)を派遣

2017

  • 中国の看護学校を視察。四日市福祉専門学校の入学生・技能実習生の受け入れについて、可能性と課題を検討
  • 小山田、水沢、神前で「よかよか倶楽部(基準緩和型通所サービス)」を開設
  • 認知症対応型通所介護事業所(小山田、常磐、四郷)を休止
  • 改正社会福祉法に則った定款に変更
  • 創立43周年記念式典を開催
  • 四日市福祉専門学校、入学生2名

2018

  • 人材育成開発室を設置。法人研修規程の策定、採用時のOJT研修、法人内部研修のeラーニング確立と充実
  • 四日市福祉専門学校での留学生受け入れ開始。第1期生入学(全24名、うち外国人留学生16名)
  • 百五総合研究所に委託し、モラルサーベイ(職員意識調査)を実施
  • 理事会で諏訪ハッピースペース事業の撤退方針とサテライト水沢事業取り下げを決定
  • 韓国ソマン福祉財団視察研修に青山里会から3名(介護3)を派遣
  • 青山里会の使命・理念・行動指針を新たに作成(ガバナンス強化と職員による組織経営への転換)
  • ふれあい動物園の廃止(感染症対策費用の高騰)

2019

  • 第二代理事長の川村 陽一が死去。新理事長に落合 将則が就任
  • 「みえ働きやすい介護職場取組宣言」の認証を受ける
  • 認知症対応型通所介護事業所(川島・かんざき・亀山)、四郷訪問看護ステーションを廃止
  • 四日市福祉専門学校、16名の留学生を受入れ
  • 法人新ロゴデザインが職員アンケートにより決定する
  • サテライト小杉の母体施設を、小山田特別養護老人ホームから「介護総合センターかんざき」へ変更
  • 創立45周年記念式典を開催
  • 地域密着型通所介護事業所「小杉介護サービスセンター」を廃止
  • 法人ウェブサイト、パンフレットの全面リニューアル
  • 第19回物故者慰霊合同法要を実施(最後の合同法要)
  • 働きやすさ・働きがい相談窓口を開設
  • グローバル人材育成開発室を設置
  • キラキラプロジェクト(広報)を開始
  • 第1回法人研究発表会を開催(小山田温泉祭りから研究大会へ)。受賞演題「入所施設利用者に対する身元保証人に関する実態調査」「介護職員の排泄ケアに対する意識について」「特殊機械浴で使用するクッション開発についての実践報告」

2020

  • 亀山ヘルパーステーションを廃止
  • 技能実習生の受け入れを開始(介護技能実習第1期生として4名来日)
  • 新人事制度(給与体系の全面見直し、年功序列から能力評価へ、人事考課制度の導入)の開始
  • 四日市福祉専門学校、15名の留学生を受入れ
  • 四日市福祉専門学校より在留資格「介護」9名が青山里会に就職
  • 法人全体で情報共有ツール「LINEWORKS」を導入
  • 小山田老人保健施設で「タブレット記録システム」を法人初導入
  • 技能実習生、介護2期生4名(ベトナム)が配属
  • 創立46周年記念式典を開催
  • 小山田美術館(小山田苑事業)の運営を終了
  • 各職種部門の産休や育休経験者の代表による「NEXT+プロジェクト」を開始
  • 第1期経営改善プロジェクト「KAIKA」をスタート。取り組み課題:食材費のコスト削減、ICT・介護ロボットの推進(KAIKAの意味:改革→開化→開花経営改善プロジェクト)

2021

  • 第2回法人研究発表会開催。受賞演題「腰痛と福祉機器使用状況に関する実態調査」「介護老人保健施設における在宅復帰支援にむけて」「利用者に使いやすい食器に関する研究」「コロナ禍での法人内入所施設における面会のあり方について」
  • 才山工芸村「陶芸工房・藍工房」(小山田苑事業)の運営を終了
  • サテライト小杉(地域密着型特養)を廃止
  • デイサービスおおぞらを廃止
  • 四日市福祉専門学校、38名の留学生を受入れ
  • コロナ感染対策による「三重県社会的検査」開始(全職員、週1回のPCR検査を実施)
  • 創立47周年記念式典を開催
  • 小山田特養の厨房を移転
  • 小山田苑の大規模改修を実施

2022

  • 第3回法人研究発表会開催。受賞演題「ケアワーカーの業務に関する研究(1)」-業務実態と適切な役割分担について-、「小山田学校の実施過程についての質的分析」-今後の方向性を展望する-、「研究参加職員の研究意欲と仕事や職場の満足感との関連に関する研究」-2020年と2021年の中間時点での縦断調査をもとに-
  • NEXT+プロジェクトによる職員アンケートを基に、育児短時間勤務制度、子の看護休暇制度を拡充。研修担当者を「働きがい相談窓口」に位置付け
  • 四日市福祉専門学校、16名の留学生を受入れ
  • 第2期経営改善プロジェクト「KAIKA」スタート。取り組み課題:介護事故、感染防止、車両事故、ICT・介護ロボット、稼働率改善
  • 技能実習生(調理)の受け入れ開始。介護4期生4名、調理1期生2名(ベトナム)が配属
  • 創立48周年記念式典を開催
  • 亀山老人保健施設大規模改修工事(外壁、防水、給湯機設備のリニューアル)を実施 

2023

  • 2020年以降に来日した技能実習生の内、計5名が技能実習生から特定技能実習生へ転換
  • 介護総合センターかんざき大規模改修工事(外壁、防水、空調、電気設備のリニューアル)を実施
  • 第4回青山里会研究発表会を開催。受賞演題「その人らしい生活の支援に向けて」-24時間シートを活用した取組み-、「小山田特養養護老人ホームにおける看取りケアのチェックシートの作成」「職員に対する健康促進への支援の実証的研究」-弁当提供を中心にして-
  • みえ働きやすい介護職場取組宣言で「ゴールド」事業所の認証を受ける
  • 四日市福祉専門学校、30名の留学生を受入れ
  • 技能実習生、調理2期生2名(ミャンマー)が配属
  • 落合 将則が理事長職を退任。新理事長に近藤 辰比古が就任
  • 小山田苑を入所定員80名から76名、生活介護90名から83名に変更
  • 技能実習生、介護5期生5名(ミャンマー)が配属

2024

  • 創立50周年記念式典を開催

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アルバム

2024

青山里会に関わる人々、施設の思い出

前の歴史 改革/2005-2014年

青山里会 50周年
デジタル記念誌

社会福祉法人 青山里会
https://seizanrikai.jp/