2005-2014
介護保険制度開始以降、あらゆる経営形態のサービス提供者が介護業界に参入し、さらに、ご利用者が自ら事業所を選択するという介護サービスに変化しました。これにより、ご利用者に選ばれる「競争力」という視点が重要になりました。
そのため、2005年以降の10年間は、サテライト化や孤立化防止対策のため、各地域における施設開設が進むとともに、小山田地区の施設においてもサービス改善が活発化します。
さらに、この時期は社会福祉法人の在り方に関しても議論が湧き出した時期でした。われわれとしても地域の皆さまからより一層の信頼をいただけるよう、ガバナンス強化などの法人改革に着手していくことになりました。
また、人手不足も深刻な課題となっていた時期でもあり、2008年にはリーマンショックの影響で派遣切りにあった60名の日系ブラジル人の登用を実施します。50周年となる今でこそ、介護現場のグローバル化は進んできているものの、当時としては先駆的な動きでした。
2004年ごろには医療や介護の業界で「地域包括ケア」または「地域ケア構想」といった言葉も聞かれるようになってきました。青山里会では30周年以降、「地域包括ケア」への取り組みともいえる各地域での拠点づくりを積極的に進めてきていましたが、さらなる地域拠点づくりと、小山田特養のサテライト化が進む時期を迎えます。
サテライト化の背景には、従来型の多床室中心の小山田特養を個室・ユニット化へ進める目的がありました。その動向は全国的にも注目されるものでした。青山里会における改修の方針としては、地域の中にサテライト型施設を設置し定員を減少させ、減少により空いた本館を個室・ユニットに改修するという流れを計画しました。さらに、サテライト型施設を設置する際には、既設の在宅介護サービスセンターに併設。ショートステイサービスを併せて整備することにより、地域の介護拠点施設として活動できるように検討しました。
2004年にオープンした「小杉介護サービスセンター」がこの年、完成を迎えます。既に運営していた1階部分の通所介護に加え、2階部分をサテライト型特養の居室(定員10名)としました。
また、小杉の取り組みは、新築ではなく既存の建物を活用した改修型での整備でしたが、これには特養の設備基準の緩和が必要となり、全国に先駆け、四日市市の構造改革特区としての実施となりました(2018年には地域密着型介護老人福祉施設として制度化されました)。
サテライト四郷は、1996年に立ち上げた四郷在宅介護サービスセンター(通所介護、訪問介護、グループホーム、居宅介護支援、在宅介護支援センター)に併設し、入所20床・ショート10床の全室個室化した全国的にも珍しい木造建ての地域密着型特別養護老人ホームとして開設しました。
居宅介護サービスと住まい(小規模特養)が融合したサテライト四郷の開設は、四郷地域の皆さんが身近なところで必要なサービスを受けられる仕組みが根付くことにつながりました。そして、このような取り組みは、行政や地元住民の協力なくして、成し遂げられないことであると再認識をした取り組みとなりました。
「サテライト川島」「サテライト常磐」ともに、木造平屋建てで特養20名、短期入所10名での開所となりました。規模は小さいながらも、住み慣れた地域から離れることなく、プライバシーの確保と、きめ細やかなケアが受けられる居住タイプの特別養護老人ホームになり、地域に密着して開設されたことは、住み慣れた地域で住み続けられる環境づくりの一環として大きな意味を成すことになりました。
地域において、高齢者の孤立化の問題が大きくなる中、孤立化防止拠点いきいき安心生活館「えがお」と「ぬくみ」が、高齢化率の高い「高花平商店街」と「三重団地」に開設されました。「えがお」と「ぬくみ」の名称は、地元住民の方に名付けていただきました。
孤立化防止拠点の機能としては、①総合相談機能、②地域住民が気軽に集える場所、③食の確保の3本柱の機能を備え、地域の交流の場所となりました。
この取り組みは、福祉の専門職として、地域ネットワークの形成に向けた取り組みを、果たすべき使命の新たな一歩と位置付けることにつながり、以降、公益的な活動に軸を置いた事業を推進していくことになりました。
この年、在宅介護センターを水沢地区に開設します。木造で温かみのある造りにし、誰もが気軽に集えるコミュニティースペースを確保しました。地域住民の集いの場や介護予防の場としてもご活用いただけるようにし、「孤立化防止拠点」としても期待を寄せられました。
青山里会にとっては、三重県外で初めての介護・福祉の拠点となる「びわじま介護センター」を名古屋市西区に開設しました。
名古屋市は、全国の中で高齢者や要介護者が今後も大きく増加していく地域であり、これまで築いてきた介護と福祉の実践と実績を基に、大都市名古屋市においても青山里会の挑戦が始まりました。
「びわじま介護センター」は地域密着型介護老人福祉施設(定員29名)と短期入所者生活介護(定員9名)に加え、青山里会で初の試みとなる小規模多機能型居宅介護(定員25名)とサービス付き高齢者向け住宅(9室)を整備し、さらに地域交流スペースを確保、介護・福祉と住まいの機能を併せ持つ、「地域の総合介護福祉施設」として開設しました。
介護保険制度開始前は、委託措置によってご利用者が来てくれるという状況でしたが、制度開始後は、ご利用者が施設を選択することになります。すなわち、時代やニーズに合わせたサービス提供が必要になり、ご利用者に「選ばれる」という観点を持った法人経営・施設運営を進める必要が出てきました。
このような背景において、サテライト化による小山田地区の施設における生活環境の改善が行われるとともに、認知症ケア、利用者の重度化・重症化への対応も進んでいきます。
「食」への取り組みは、HACCP(ハサップ)を導入し、クックチルド真空調理などの調理技術をもって前倒しの調理を実現します。これにより、施設、居宅、サテライト、地域などの多種多様なニーズに応え、より安全に食事の提供ができるようになりました。
また、あおぞらホールは職員の研修や地域交流のための活用を目的とし、1階に調理施設が併設されていることで、バンケットホールとしての活用も期待される施設となりました。
第二小山田特養についても従来型の施設であったため、個室・ユニット型への改修工事とすでにあった個室の拡張工事を行いました。また、熱源を重油から電気・ガスに変更し、環境に配慮した施設にリニューアルしました。施設の立地環境にも手を加え、大規模施設としての強みを生かした改修工事となりました。
オランダ視察の際に、認知症の方々やご家族の心落ち着く居場所が街角にたくさん設けられている光景がありました。
2011年、地域交流ホームの老朽化に伴う改修が必要であったこともありリニューアルに踏み切りますが、その際にこの視察で見た「居場所」を地域交流ホームの新たなサービスメニューとして組み込むことになります。
このような気軽に安心して立ち寄れて楽しく過ごすことができる居場所は、孤立化の防止策にもつながることを実感し、後の「まちなかいきいき安心生活館」や「アクティビティ部門の創設」に通じることとなりました。
開設当初は予防的な活動として開設された軽費老人ホームでしたが、利用者の要介護度が重度化し、居住機能の脆弱化や老朽化が進んでいたことを背景に、リニューアルに踏み切ります。設備面では特殊浴槽の設置、食堂を増築しサロン化。外部サービスと連携することで日常生活支援サービスの充実も図られました。
これにより、ご利用者の重度化・重症化に耐えうる「住まい」として再出発をすることになりました。
オランダのデイサービスで開発されたアルツハイマーカフェをモデルにした「認知症カフェ お茶の間」を小山田地区、高花平地区、川島地区で実施しました。
実施にあたり、認知症カフェプログラムチームを結成。地域におけるさまざまな関係者のネットワークを構築し、日本人にあったプログラムを開発していきます。認知症があっても安心して暮らせるまちづくりのテーマの下、誰もが参加でき、和やかなハッピースペースを創出することにつながりました。
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